これまでの万博の振り返りと残り2ヶ月の展望・無意味な黒字化
8月に入り、万博も残り2ヶ月と少し。この辺りで、一度これまでの万博の来場者を振り返り、閉幕間近の混乱について考えることにする。
これまでの来場者数の振り返り
(以下、来場者数は一般来場者の確報値)
初日は悪天候の中、イベントを詰め込んだこともあり12.4万人となかなかのスタートを切ったが、その後は低迷し、ゴールデンウィークも飛び石連休だったことも関係しているかもしれないが、全く伸びなかった。5月3日-6日の4連休は最大値が12万人、平均値は9.81万人と、事前の万博協会の予測(最大約17.5万人、平均約16万人)を大きく下回った。
前回の記事ではゴールデンウィークの東ゲートが入場者に耐えられるか心配したのだが、予想を遥かに下回ったので、この時点では大きな問題は出なかった。
開幕から1ヶ月以上、初日を超えなかった大阪・関西万博であるが、5月23日の一般来場者数14.52万人を記録したのを皮切りに、5月末は来場者の大きな伸びを見せた。5月31日(土)には、音道楽EXPO、USJ特別ショー、花火と、イベントがこれでもかと詰め込まれたことに加え、通期パスの割引コードの最終配布日も重なり、過去最大の16.99万人の入場を記録した。5月25日(金)-5月31日(土)の1週間の来場者数は94万人、平均13.4万人と、週当たりの来場者数は最大を記録した。
そして6月は5月の勢いのまま、雨が少なかった(特に来場者の多い金曜日、土曜日のうち、雨が降ったのは14日(土)のみだったことが大きい)こともあり、1日当たり平均で12.7万人が来場した。特に6月28日(土)は、6月唯一の花火である大曲の花火があったこともあり、過去最大の18.5万人の来場者を記録した。
7月は梅雨が非常に短かった(6月9日-6月26日)ことで始まりから酷暑に見舞われた。7月18日には110万枚売れた前期券の使用期限がきたが、駆け込み需要は全く見られなかった。ベースラインの低下は明かで、6月の来場者が11万人以下だった日は4日しかなかったのに対して、7月の来場者が11万人以下だった日は16日と、月の半分以上が5月平均値を下回った。
その分、イベントによって来場者を補った格好である。12日(土)、13日(日)は初日に飛ばなかったブルーインパルスの効果でそれぞれ17.2万人、16.1万人の来場者を記録し、夏パスの開始と3連休が重なった19日(土)-21日(日)にはそれぞれ13.8万人、16.3万人、13.1万人を記録。23日(水)はスペシャル花火ショーの影響により、13.1万人を記録。
これらによるスポットの来場者増と夏パスと7月19日から8月末まで毎日ミニ花火大会を行うことにしたことによって、7月の平均来場者数は11.6万人と、なんとか5月の11.2万人を超えることができた (なお、4月の平均は8.3万人)
8月は事前予約は特に多くなかったが、お盆2週間前くらいから急激に増え始め、8/9~8/15 (12~17は音楽フェスもあり)は平均14万人以上の来場者が見込めそうである。
8月の最終的な平均は6月の平均人数12.7万人くらいの水準になりそうだ。

青線は来場者数平均15.7万人を示す
この間、来場・入場関係の施策は大小様々なものが講じられた。開幕当初は、西ゲートの来場予約が全く来場手段にマッチしておらず、東ゲートも1時間あたり最大1.5万人程度の処理と、とても10万人越えの来場者に耐えられる仕様になっていなかった。
効果の高かったのは、東ゲートの予約数の増加 (4~5月、段階的)、17時入場の1時間前倒し (5/7より)、西ゲートにおけるP&R優先入場レーンの設定 (5/24より)、などだろうか。
このような施策によって、何とか平均的に11万人程度は受け入れられる体制が整い、それに合わせて来場者数も増加していった。 (各パビリオンのキャパは全く足りないが)。それまでは、10万人を会場にいれることにも苦労していた事実を忘れてはならない。
閉幕前の混雑を見て、「空いていた4月~5月前半に行けばよかったのに」という声が必ず上がるだろう。しかし、現実的に、それは机上の空論である。
来場者の平準化については、5月から6月までは機能していたと言って良い。しかし、7月には既に平準化の崩壊が見えており、9月中旬以降、酷暑が過ぎて残りが1ヶ月を切ると、平均来場者数は6月を超えることになるだろう。よって、会期後半への集中を避けるという本来の役割は果たせていないと言えるだろう。
なお、万博協会の予測では、目標の来場者数2,820万人の平均値である15.7万人を超える日は7月末までに26日間であったが、実際は5日間に留まっている。平準化がある程度上手く作用したのは、単純に来場者数が想定よりも少なかったことが要因として大きそうだ。
閉幕前の展望
協会は8/18以降の日付指定のないチケットの販売を終了することを発表した。
大阪・関西万博は2025年10月13日(月)で閉幕となりますが、過去の万博では会期終盤に非常に多く方が来場しており、大阪・関西万博においても、9月以降は会期末にかけて大変混雑する見込みとなっております。会期終盤は、ご希望の日時での来場予約が難しい状況となることが予想されますので、お早めの来場日時予約を強くおすすめいたします。
このような状況を踏まえ、あらかじめ来場希望日時の予約の空き状況を確認いただいた上で入場チケットを購入いただけるよう、公式チケットサイトでは、8月18日(月)から来場日時指定※のチケットのみを販売することといたします。また、8月17日(日)をもちまして公式チケットサイトでの来場日時未定での入場チケット販売を終了するとともに、あわせて来場日時の指定がない通期パスと夏パスの販売も終了とさせていただきます。
※チケット購入後の来場日変更は3回まで可能です。(ただし、来場日を変更する場合、パビリオン・イベントの予約は失効しますのでご留意ください。)
結局、会期の最後への集中を避けることはできず、最後の土曜日の花火のある9月27日や、会期最後の3連休を中心に、閉幕間近は来場者が集中することになるだろう。
愛・地球博から20年、当時もキャパを超えた閉幕前への集中は批判されたが、進歩なく今回も同じことが起こりそうだ。ただし、愛・地球博の想定を超えた来場者数は本来ルール違反の民間駐車場や送迎無しでは成り立たなかったので、輸送手段とゲートが制限されている今回の万博では愛・地球博ほどの1日の来場者数は期待できない。
次の論点は、万博会場に1日に入れる最大の人数はどのくらいなのか、である。
最大来場者数は何人になるか
鍵を握るのは、現時点の最大来場者数を達成した6/28と、花火で夜間の来場者が多かった7/23の東ゲートの、午前中の列、16時入場の列が途切れた時間である。
6/28日は、朝から東ゲートの列が途切れず、ようやく列が途切れたのは14:15分を過ぎてからであった。
つまり、東ゲートの16時台までの余力は2時間を切っている。そして、来場者数が多くなると、当然退場者も増える。この辺りの時間帯からは、退場動線の確保のためゲート数は半減する。
東ゲートの最大処理能力は2.2万人/時間程度なので、レーンが半減すると1万人/時間程度まで減少する (レーンが減ると、レーンが詰まった時の影響が多くなるので、レーン数の減少以上に処理能力は減少する)。
よって、16時までの余力は1.7万人程度と推測される。
16時以降の入場の余力は、7/22と7/23を比較すると分かりやすい。
朝の列は両日とも11時15分には途切れていた。一方、16時以降の入場は22日は16:20には列が途切れていたが、7/23は19:52頃にようやく列が途切れていた。

来場者数の速報値 (確報値には恐らく再入場者を含むので、ゲートの処理能力の違いを考える上では速報値が便利である)は22日が9.7万人、23日が13.7万と、4万人差だった。このことから、ほぼ16時-20時の東ゲートの処理能力は4万人程度と予想できる。
6/28の16時入場の列が途切れたのは17:35だった。よって、東ゲート16時入場の余力は2.4万人程度であろう。
最後に西ゲートであるが、これはP&Rでどれくらい来場するかに依存する。P&Rバスの限界が約3.5万人で、6/28日は約2万人がP&Rで入場したので、西ゲートの余力は1.5万人である。
よって6/28の来場者数18.5万人にそれぞれの余力を足し合わせれば、理論上あの会場に来場できる最大値は
18.5 + 1.7 (東ゲート16時まで) + 2.4 (東ゲート16時以降) + 1.5 (西ゲート) = 24.1万人
と推測できる。
ただ、これは西ゲートの輸送能力を使い切り、東ゲート前に朝 (もしくは前日の夜)から20時まで列が途切れることがないという仮定の元、さらに退場動線は東ゲート半分解放で確保できる場合の数字である。16時以降の来場者は間近で増大しているとはいえ、花火無しに20時まで来場者が続くとは考えにくい。
つまり、この理論人数が可能な候補日は花火がある8/23 (土)、9/27 (土)、10/8 (水)の3日しかないが、8/23はまだ駆け込み需要には早い上に8/31までは毎日花火自体は上がっているので、そこまでの来場者数にはならないと推測される。
また、10/8は平日なので、16時以降の入場は期待できても、西ゲートのP&Rや東ゲートの12時以降の枠は消費しきれそうにない。
そうなると、やはり9/27 (土)が最大の入場者となる可能性が高そうだ。
それにしても、計画時も思ったが、想定する来場者2,820万人の1%の来場者も入れられない会場設計は、やはり異常である。
開幕前は2,820万人の目標を堅持し、それを元に散々経済効果やイベント規模の宣伝をしておきながら、会場への来場方法とキャパを確保せず、開幕してから一転して「収支ライン2200万人」を強調する。この詐欺的な手法は、今後の公共事業への信頼性を毀損したと言えるだろう。
200万枚を超える未使用券が出る
低調だった開幕前と打って変わって、開幕後は週間50万枚ペースで入場券が売れ続けており、8/9時点で1,800万枚を突破した。問題は、チケットの売れ行きと来場者数が全く連動しておらず、現時点でも1/3以上の券が未使用であることである。
8/9時点の未使用券の枚数を推測してみよう。
- 総販売:18,095,703枚
- 速報来場:12,807,000人
- 通期パス販売:399,479枚
- 愛・地球博の平均利用回数:11.05回/185日
- 8/9までの経過日数:119日
- ここまでの通期パス平均利用回数 ≈ 11.05×119/185 = 7.1回
- 通期パスの「2回目以降」来場分:399,479×(7.1−1) ≈ 2,436,822人
(先ほども述べた通り、確報来場者数は再入場者数や、チケットのない3歳以下の人数が含まれていると推測されるため、速報値で計算した)
以上より、未使用券 = 18,095,703 - (12,807,000-2,436,822) = 7,728,656 (枚)
実際には夏パスの複数回使用分があるので、780万枚くらいの未使用券が残存すると推測される。
閉幕前は当日券以外のチケット販売枚数は前述の通り予約は必須になることからも少なくなると予想されるが、6/12時点の来場者の3割は万博IDのない大人だったと万博協会が発表していることからも、当日券は今後も一日数万枚、1週間あたり30万枚は売れ続けると思われる。
残り9週間で1000万人が来場するとして、その3割の300枚が新規チケット、160万人くらいが通期パスによる入場。この場合240万枚の未使用券が出る計算だ。
愛・地球博でも未使用券が99万枚出ており、今回は前売りの公式販売数が愛・地球博の1.7倍であった。単純計算で160~170万枚は未使用券が出ることになる。
当時に比べるとチケットの売買や譲渡手段は格段に向上しているにも関わらず想定よりも多くの未使用券が出ることから、その効果を打ち消すほどに業や自治体に処理できない枚数を売りつけているようだ。
黒字・赤字は無意味な議論
黒字化達成!と騒いでいるようだが、このような黒字化に意味はあるのか。
何度も言うが、警備費が除外された運営費など聞いたことがない。
一部では、警備費は最初から国が負担することになっており、愛・地球博でも同様であったとい主張もあるようだが、それを裏付ける証拠は見つからなかった一方、それに反する証拠は明示できる。
まず、今回の万博で警備費が当初万博協会が支出する計画だったことは、次の国会答弁を見ても明らかである。
米山委員 結構な御答弁で。そうしますと、閣議決定は守られるということでございます。
そうしますと、この閣議決定の中にもう一つ文章があるんです。「会場運営費は適正な入場料の設定等により賄うものとし、国庫による負担や助成は行わないこと。」これが閣議決定されております。
ところが、警備費二百億円というものは、普通、警備費というのは会場運営費だと思うんですよ。この二百億円はなぜか国が払うということになっているということなんですけれども、これはおかしくないですか。何でこちらの閣議決定の方はいきなり覆されているんでしょうか。御答弁をお願いいたします。
西村国務大臣 警備費、警備につきましては、御指摘のように、当初、運営主体であります博覧会協会が実施をするということを計画していたものであります。
他方、この万博の成功に向けて最も重要なことと言ってもいいと思いますけれども、安全確保について、このことについて、近年の警備事案、事故などを踏まえて万博誘致当初よりも高い水準が求められているという中で、万全を期す必要があるというふうに認識をしております。
こうした状況を踏まえて、まさに万博の安全な運営、実施に不可欠な会場内の警備について、その強化の方向性を国が指示する形で行うことを想定をしておりまして、博覧会協会が行う事業である運営費を補填するのではなく、私どもが責任を持って実施をするということで、この閣議了解に反するものではないというふうに認識をしております。
次に、愛・地球博の予算にはその他事業 (建設事業以外・運営費)の会場管理サービス事業費という項目に会場警備関係費が計上されており、決算でそれを変更したという事実も確認できない。


決算は会場管理サービス事業費の詳しい内訳は示されず、予算よりも4.5億円増額増額されていた。また、平成16年度予算にも8.9億円の予算が計上されている。
これらを総合すると、これ以外に政府や自治体からの警備費支出があったかもしれないが、愛・地球博の警備費が運営収支から除外されていたことは明確に否定される。
何故事実を捻じ曲げて警備費を運営費から外したことを正当化しようとするのかは理解に苦しむが、そもそもの話、運営費の黒字・赤字については、その経費の境界が極めて恣意的で曖昧なので、これについて争うのは筋が悪い。
むしろ、万博は多くの自治体や企業が絡む国家事業であるのに杜撰な計画のまま開催にこぎつけた事実にこそ注目すべきである。
協会は運営費黒字、愛・地球博以上の来場者数を達成して「成功」と結論づけたいようである。
しかし、その実態は企業のチケット購入による負担、建設費未払いでも納期に間に合わせた建設会社など、多くの犠牲が下敷きにある。
それに目を向けずに「成功」とか「万博最高」とか騒ぐのは、悍ましい行為だと思わないだろうか。
東ゲートはゴールデンウィークを乗り越えられるのか
初日の振り返り
4/13に開幕を迎えた大阪・関西万博。その来場者は12.4万人+スタッフを含めた関係者2.2万人と発表された。関係者を含む数値を来場差数と見做すのはドバイ万博に倣ったものらしいが、少なくとも愛・地球博の来場者のカウントに関係者は含まれていない。来場者数目標2,820万人は2020年の7月策定の基本計画から全く動いておらず、チケットの販売目標が2,300万枚であったことからも、当初の想定とは異なっていることは明白である。
愛・地球博では、チケットの使用枚数が1631万枚 (売り上げ+交換-未使用)、全期間券以外のチケットの来場者が1,597万人、全期間券の来場者が490万人、無料入場者130万人 (4歳未満92.3万人、添乗員+引率者+招待客35.7万人)で、総来場者2,205万人。
そのため、愛・地球博の関係者は2,205万人中、招待客に区分されている最大35.7万人未満であり、スタッフが来場者数に含まれていないことは明らかである。
また、2,820万人の中に最初からスタッフを含まれていとすると、スタッフ数が約1.5万人なので会期中280万人はスタッフで占められ、スタッフを除く入場者は2,640万人。すると夏パスと通期パスによる来場者が340万人程度とチケット売り上げが少ない愛・地球博よりも少なくなってしまう。
よって、元からスタッフも計算に入っていたという主張は、通期パスや夏パスによるリピーターが愛・地球博に比べて大幅に少ないか、未使用券が大量に出ると言っているのと同義である。
来場者の定義をどうするかを決めるのは万博協会の自由ではあるが、さも計画通りと振る舞うのは信用に関わるのでやめた方がいいし、これのせいで来場者数のカウントが非常にやりづらい (万博を運営する上で重要なのは、どれくらいの客がいつ入るかであり、スタッフの数はほぼ関係ない)。
本稿では、来場者はスタッフを抜いた数で表記する。
さて、初日に12.4万人の来場は万博協会の想定を上回っており、スタートで転けた愛・地球博の反省が生かされた言えるが、しかし一方で、昼過ぎには入退場の人流を全く捌くことができず、パビリオンやレストランの数は足らず、雨風を防げる場所が余りも少ないといった様々な問題が露呈した。
これらはほぼ事前に懸念していた通りの結果であり、個人的には全く驚きがない。
初日のみ特別措置として西ゲート予約者の東ゲートからの入場を許可したが、これが東ゲートへの集中を招いた。特に、12時以降の枠は、枠が5時間分ある一方で、来場需要は12時付近に集中する。さらに、昼以降は退場の動線も引かなければならず、ゲートをフルで使うことはできない (雨風がひどくて昼過ぎに帰った人が多かったことも、これに拍車をかけた)。
結果として、東ゲートの入場列が捌けた頃には15時をとうに過ぎており、少なく見積もっても4万人程度の人々が雨の中並ぶことになった。
Liveカメラから推測すると、午前中の東ゲートは1.5万人/時、西ゲートは全時間帯合わせて2万人程度、東ゲート12時以降が4.5万人程度、17時以降0.5万人程度、だった。これに一万人の第九を合わせると12.5万人となり、協会が発表する数値とほぼ一致する
そして、会場の設備 (レストラン、パビリオン)のキャパも、12.4万人の時点で全く足りず、あの会場に20万人以上の人を詰め込むことがそもそも無理であることは、真剣に万博の情報を集めている人ほど感じざるえをえないだろう。
テストランの時の気候や来場者数であれば、パビリオンに入れなくても外観を巡ったり、レストランに多少並ぶのも許容できたと思うが、雨風が強かったり、照り返しが強い夏日にはそうもいかない。
初日を除くと、概ね1日8万人前後の来場者で推移しており、事前に準備をしていればある程度パビリオンを快適に回ることもできる状態だ。逆に、これ以上人が来ると、一気にリソースが枯渇する。
来場者の満足度を考えると、無理にこれ以上集客をせずに、せっかく導入した予約システムで1日の来場者数を今くらいのペースに保つのが最善であることは、万博への来場意欲が高い人ほど感じていることではないだろうか。
しかし、万博協会にとってはそうは問屋が卸さない。平均8万人程度では、自らが掲げる赤字回避ラインにも届かないからである。
これは何度も強調しておきたいが、赤字を回避するためのラインと言われている1,800万枚は、実は全く赤字回避になっていない。そもそも採算を計算しているのは運営費のみで、建設費や関連費用の内、公金支出分はどう足掻いても赤字である。
また、その運営費すら、警備費255億円や宣伝広報費の一部は、国が別途で負担している。つまり、何を持って「運営費」とするかは協会の裁量次第であり、国や自治体、企業に負担を押し付けることによって、帳尻はいくらでも合わせられるのである
「空いています」表示の大量発生
ゴールデンウィークの来場予約が余り増えないことを危惧したのか、4/24の夕方になって突如としてゴールデンウィーク期間の東ゲートの枠が増えた。


東ゲートのみ午前中が全て「空いています」となり、西ゲートは変化しないことから、システムエラーでなければ協会が枠を操作したことは明白である。
実は、枠の拡大は初めてではない。4/17日に、おそらく全ての枠について、両ゲートとも少なくとも午前中の枠が拡大されていた。

Liveカメラでの推定になるが、初日の東ゲートの予約人数は1.5万人程度だったのが、この拡大で1.8万人程度になった思われる。
ゲートの進行自体は、QRコードの表示にさえつっかえなければ想像以上にスムーズで、毎日1時間2万人ペースはコンスタントに出せているようだ。
したがって、この時の拡大については、少なくとも東ゲートに関しては妥当だと思った。
しかし、もし混雑表示の基準自体 (66~70%くらいだと思われる)が変わっていないのだとしたら、今回の拡大は捌き切れるか怪しいラインを攻めている。
テストランの時に計測したところ、一つの金属探知機を通せる人数は毎分10~14人だった。金属探知機は27レーンあるので、毎分10人だと1時間あたり1.62万人、14人だと2.27万人になる。
しかし、1.8→2.27万人だとしても増加率は約26%であり、この程度の増加率ではこれまでの基準では「混雑が予測されます」表示になるはずだ。
一方で、もし1.8→2.5万人だと、36.6%増となり、ギリギリで「空いてます」表示になると考えられる。
これは1レーン当たり分間15.4人ペースであり、余程スムーズに人が流れ続けなければ達成できない数字である。それを午前中の3時間続けることができるのだろうか?
この枠の増加は前回と違ってゴールデンウィーク期間のみであるため、ゲートの能力を見て増やしても問題ないと判断したとは思えず、苦肉の策であると推察される。
無理なものは無理
現状P&Rシャトルバスが殆ど機能していないため、西ゲートからの来場者は児童などの団体バス利用者と舞洲シャトルバス利用者 (9時~10時台の枠のみ)に限られおり、10時半くらいにはほとんど閑散としている状態が続いている。
4/19と4/20の来場者は余り伸びなかったのは偶然ではなく、休日は学校単位の団体客が基本いないため、現状の枠設定では12時以降も人が押し寄せるようにならないと来場者数が伸びない状態にあるからである。しかし、この枠に人が押し寄せると、退場の動線と重ねってしまうのは、初日に見た通りである。
初日のイメージもあるため、12時以降の枠を取るくらいなら、別日に枠を取ろうと言う心理が働く。結果として、今来場者数はある程度平準化されており、 (万博協会の想定するより低い来場者レベルではあるが)「並ばない万博」は初日以外はほぼ達成されているのである。
今回の変更は、そんな人々や、偶々予約状況を見ていけると思った人を取り込むための施策であると思われるが、初日の二の舞になる気がしてならない。
P&Rシャトルバスが機能しない限り、22.7万人はおろか12万人すらまともに会場に輸送できない。東ゲートの午前中の枠拡大は、その場しのぎ (になるかも怪しいが)に過ぎないのである。
メトロに依存した輸送計画を続けていては、また22日のような事故で数千、数万単位の人に影響が出るだろう。
おそらく万博協会としては、今後
- 開場時間の繰り下げ (東ゲートのみ?)
- 駐車場の値段の値下げ、促進キャンペーン
- バスの拡大要請 (できるかどうかは不明)
のような施策を講じると考えられるが、前回も話した通り大阪で1日1.1万台の自家用車来場を求めること自体に無理があるので、おそらく根本的には何も解決しないだろう。
無理に無理を重ねると歪みが出る。一度立ち止まって、無理に来場者を増やすのはやめにするべきではないだろうか。
初日の
万博が不人気だと一番思っていたのは、他ならぬ万博協会だった件について
*4/12追記
万博協会より、開幕日のみ西ゲートの来場予約者の東ゲートからの入場を許可する特別措置が告知された。
対策無しで開幕日を迎えるのはやはり無理があったようだ それに伴って、タイトルを変更した。
(4月13日、西ゲートに何人の人が辿り着けるのだろう。→万博が不人気だと一番思っていたのは、他ならぬ万博協会だった件について)
あれだけ初日に人を集中させる施策を行なっておきながら、来場目標平均の15万人前後の来場予約で特例措置を発動した。しかも、この特例措置は、桜島で起こるであろう混乱を東ゲートに移しただけで、根本的な解決になっていない。
2,820万人の来場者目標など達成できないと一番思っていたのは、他ならぬ万博協会だったことが開幕日前に明らかになったと言える。
開幕日に集中する来場予約
イベントを大量に盛り込んだこともあって、初日の4/13日に初めて混雑マークが点灯した。

そして、4/13日の来場予約者が、14-15万人ほどであることがアナウンスされた。
(4/4時点で13万人、4/5時点では14万人の予約でこのときはまだ13日は「空いています」の表示だった。4/9時点で15万人の予約と報じられ、表示も「混雑が予想されます」になった)
*なお、初日は別枠で「1万人の第九」に参加する来場者が1万人いる。この数も予約者に含まれているかはわからないが、今回は含まれていない前提で話を進める。
下の画像は、4月4日0時付近での予約状況である。

一方、下の画像は、4/9の17時30分当時の予約状況である。17時以降の枠を除いて、ほぼ満員である。

万博協会は、想定ピーク時来場者を22.7万人と設定しており、また当初は来場予約が必須の制度設計を行なっており、超早期割りの抽選が行われ、一部の来場日が確定した時には予約不要の当日券は存在しなかったため、少なくとも来場予約枠の総数は22.7万人以上にはなっていないとおかしい。
今回明らかになったことは、空いている枠がほぼ17時以降のみとなって、ようやく来場目標の平均値である15.7万人に届く枠の割り振りになっていることだ。
東ゲート12時以降の枠にもよるが、17時以降に来場枠は、どんなに少なく見積もっても5万人を超えていることになる。
いくら退勤後に来場する需要があるとは言え、この数は多すぎる上、土日休日にわざわざ17時から会場に足を運ぶ人はほぼいないだろう (一応閉場は22時だが、パビリオンやレストランはそれよりも前に閉まる)。
このような制度設計を鑑みると、夢洲という会場で想定来場者数2,820万人を掲げることが、どれだけ非現実的なのかが浮き彫りになる。
特に、西ゲートからの来場はあまりに実情と乖離している。
東ゲートと西ゲートは分断されている
大前提として、万博協会は入場前の徒歩による西ゲートと東ゲートの移動を認めていない。

なので、東西のゲートは来場手段によって完全に分断されている。時間帯毎の枠の限界値は、その時間帯の輸送人数の総量によって決まる。
2年前から矛盾していたゲートの広さと輸送想定

初版の計画 (図左側)から、駅シャトルバス等は3.6万人減、自動車等は3.7万人減と、大幅に縮小された。初版では東ゲート (鉄道)よりも西ゲート (自家用車等)の方が分担率が高いが、第2版以降は逆転しており、その後は差が開くばかりであった。
アクションプランの第2版が作成された2023年6月の段階で、既に両ゲートを含むパビリオンワールドの落札と建築は始まっており、ゲートの大きさを変えることはできなかった。
これが、西ゲートの方が東ゲートよりも1.25倍ほど長い (時間あたりの送客数が高い)にもかかわらず、東ゲートの方が50%近く多くの来場者を分担することになった経緯である。
つまり、もう2年近く前の段階で、今の状況は目に見えていたのである。
当初目標の半分以下しか運べないシャトルバス
さらに、西ゲート内の各手段の分担にも問題がある。駅シャトルバスは第2版で3.5万人に、第4版で3.0万人ととどんどん縮小され、当初の42%の人数になった。一方で、P&Rシャトルバス、団体バス、タクシーの合計は、来場者想定が縮小した 第2版以降、6.8万人から動いていない。

現実と全く合致しないP&Rシャトルバス
当初西ゲートへのメインの輸送手段とされていた桜島シャトルバスの時間最大輸送数は4,000人なのに対して、3つのP&Rシャトルバスの輸送量は6,300人と、1.5倍以上ある。
しかも、協会が公表している一日の輸送人数から、桜島シャトルバスがフルの輸送能力を発揮するのは8時10分~11時までの約3時間だけで、それに比べるとシャトルバスは理論上13時まで最大の輸送能力を維持できる。
(勿論、駐車場の予約枠がこのように割れているわけではなく、予約時間帯は20時まである。各P&Rシャトルバスの輸送能力は既に限界なので、各時間帯の枠はこれよりも増えることはない。)

ところがこのメインとも言えるP&Rシャトルバス (とその駐車場)は、驚くほど空いている。どう見ても最大駐車可能台数11,240台 (舞洲6,240、尼崎3,000、堺2,000)の内、半分も埋まっていないのである。

桜島シャトルバスですら、10時台にはまだ空きがある状態である。他のバスは、全て足しても時間当たり1,000人も運べないため、あくまで補助的な手段に留まっている。桜島シャトルバスとP&Rシャトルバスが最大限機能して、ようやく1万人が運べるのだが、その様子は全く見てとれない。
パビリオンを宣伝している場合ではない
ここまで見ていると、当然次の疑問が浮かんでくる。一体、西ゲートを満杯にした4/13日来場予約の人々は、どうやった会場まで辿り着くつもりなのかと。
もちろん、上の図には書かれていない団体バスで来る客もいるだろう。しかし、4/13は日曜日のため、会場に招待される児童・生徒は0であり、そこまでツアーが多く組まれている様子もない。
つまり、西ゲートが埋まった4/9時点で、大半の来場者は来場手段を用意できていない状況になっていた。無予約者は、桜島に溜まっていくか、タクシーで会場まで向かうか、諦めて予約を取り直すかの三択を迫られる状況だったのである。
マスメディアでもSNSでも、今最もシェアされるべき情報は、間違いなく「東ゲートと西ゲートの会場外移動は不可能」と「西ゲートからの来場は来場手段の予約がほぼ必須」の2点だ。パビリオンの造形にうつつを抜かしている場合ではない。開幕日に桜島に滞留する人が大量に出てしまう。
万博協会の悪手
万博協会は何とかP&Rシャトルバスに誘導しようとしているが、その広報の仕方に問題があり、却って来場手段のない西ゲート来場者を増やしてしまった。
まず4/1、この頃は東ゲート9時→東ゲート10時→西ゲート9時=東ゲート11時の順番で予約が埋まっていた。来場者のメトロへの集中を恐れたのか、万博協会は次の文をホームページに掲載した。
いよいよ、大阪・関西万博の開幕が近づいてきました。大変多くの方々にご予約をいただいております。西側ゲートには、駅シャトルバス、空港直行バス、P&R駐車場(シャトルバス)が到着します。
これまでの予約の傾向として、東側ゲートの予約枠が先に埋まる傾向があり、西側ゲートは比較的空きがある状況です。
より快適に、万博会場に来場いただくために、西側ゲートのご利用をお勧めするとともに、西側ゲートにアクセスする駅シャトルバス、空港直行バス、P&R駐車場(シャトルバス)の予約状況について、以下のサイトで公表します。
西側ゲートをご利用の方は、ぜひ、早めに、これらの交通手段を予約され、ご利用いただければ幸いです。
(4/1、万博協会HP 大阪・関西万博会場 西側ゲートをご利用される皆様へ~駅シャトルバス、空港直行バス、P&R駐車場の予約状況~)
しかし、4/13に限って言えば、この段階で両ゲートとも11時までの枠は埋まっており、すでに西ゲートに余裕はなかった。
万博協会の意図としては、桜島シャトルバスの予約枠を早々に埋めて、P&R駐車場の利用を促進したかったのだろうが、素直にそれを告知することは、来場計画の破綻を認めることと同義なので、このような表現になったのだろうと推察する。しかし、これは決定的に不味かったと思う。
その後、4/5のテストランにおいて、東ゲートが混雑し、西ゲートが空いていると言う情報が拡散された。
実際には、招待人数が全く違ったことがこの両ゲートの混雑の違いのであったが、この後西ゲートへの予約が集中することになる。

そして冒頭の画像の通り、12時台の枠は東ゲートよりも先に西ゲートの方が先に埋まった。それでも、ほとんどバスへの登録は進まなかった。
流石にこのままではまずいと思ったのか、万博協会は4/9に次の声明を発表することになった。
・開幕日となる4月13日(日)は、多数の来場日時予約をいただいており、大変混雑することが予想されますので、あらかじめご了承ください。
・午前中(9時台、10時台、11時台)、12~17時の枠の時間帯での来場日時予約をお持ちの方へ
開幕日は、15時頃までは、交通機関や入場ゲート前が大変混雑することが予想されます。来場予約をお持ちの時間以降であれば入場することができますので、午後ゆっくりと来場いただくことも可能です。
・西ゲートのチケットをお持ちの方へ
桜島駅シャトルバスは、8時台から10時台につきましては、事前決済された方が優先的にご乗車いただけます。開幕日は、上記の事前決済がない場合はお待ちいただく時間が長くなる可能性がございます。可能な方は自家用車によるP&R駐車場やタクシーなどのご利用もご検討ください。(万博協会HP 開幕日の来場予約状況や入場ゲート前での当日券販売について)
この発表後、西ゲート12時以降を中心として全体的に予約が減った。しかし、それでもP&Rシャトルバスの予約が進まない限り、問題は解決しない。
そもそもの分担率に無理があったのでは?

何故P&Rシャトルバスの利用が増えないかといえば、単純にそもそも選択肢に無い人が多いからである。
値段は置いといたとしても、関西圏の府県は、全国的に見て車の保有率が低い。世帯当たりの普及台数ランキングで全国46位の大阪府を筆頭に、京都44位、兵庫43位、奈良38位、和歌山30位、滋賀22位と、特に人口の多い2府1県が軒並み低い。
一方愛・地球博への来場数の多かった筆頭の3県である愛知は31位、滋賀は上記の通り22位、三重は15位と、何も全国平均を超えている。特に、全国世帯数5位でありながら、保有率が全国平均を超えている愛知県が中心であり、関西圏とは全く事情が異なるのだが、愛・地球博をベースに分担率を最初に設定してしまったのが失敗の始まりである。
関西圏から63%の来場を見込んでいれば、愛・地球博の時よりも車の分担率が低下するのは自明である。

当然、団体バス・タクシーで問題は解決しない
改めて、計画から算出される西ゲートへの交通手段の分担率は、
駅シャトルバス: 27.6%
P&Rシャトルバス: 37.4%
団体バス・タクシー: 35.0%
であり、この内駅シャトルバスは本数が確保できず縮小されてこの値になり、P&Rシャトルバスはフルで機能しそうに無いことが明白である。
では、残った団体バスとタクシーはどうかというと、これも期待できない。
協会が想定しているタクシー利用者は183日間で45万人、一日当たり2,460人である。一般のタクシー降り場は6台分しかない。そこにタクシーが殺到すれば、どのような地獄絵図になるか、想像に難くない。
そして団体バスだが、まず日によって本数にかなり差がある。1月時点で、児童・生徒の貸切バスによる入場希望が最も多いのが5月16日であるが、それでも9時台1,100人、10時台3,500人、11時台300人の合計4,900人、一番少ない日は100人 (表示上の最小単位)で、安定した人数を運ぶ手段にはなり得ない。また、報道によると、当初の予定よりも学校単位の団体客の数が減っているようだ。
また、旅行会社のツアーの場合、会場まで団体バスで来るタイプのツアーでないと、結局何かの交通手段を圧迫することになる。ツアーの数自体も、旅行会社へのチケット販売実績を見てみてもあまり多くはなさそうだ。

何故か目標の来場者数が2倍近く異なる愛・地球博の前売り実績に対して、まだ売れていないチケットを勘定に入れて勝利宣言をしており、初めて見た時は困惑したのだが、非常に重要なことが書いてある。
即ち、団体客として今後見込まれるのは200万枚分しかなく、3/12当時の約8,000枚の実績と合わせて、今後増えても団体客は300万人を超えなさそうということである。
先述の通り、団体旅行者が必ずしもバスを使用するわけでなく、既に日程を決めている教育旅行の内、バス利用とメトロ利用の希望者はおよそ半々であることからも、団体バスの客として見込める人数は200万人以下に留まり、1日1万人を超えそうにない。
余談
3月の会議資料は、チケットの売り上げに関してもう一つ万博協会にとっては不都合な事実を突きつけている。
万博協会の会議資料より この資料によると、821万枚のチケットのうち、3/12時点で直接販売が640万枚、公式web販売が86万枚、旅行会社等委託販売が94万枚とある。
では、販売計画ではどうだったかというと、
2024年2月のチケット販売戦略 画像には直販以外の数字の内訳がないが、長さの比から、直接販売が約700万枚、公式web販売が約450万枚、旅行会社等委託販売が約250万枚と分かる。
よく個人への販売が進んでいないと言われているが、旅行会社の委託販売も全くと言っていいほど進んでいない。3月時点で約150万枚の未達がある上で、さらに会期中に約330万枚を売ることが計画されているのである。もし旅行会社が買ったとしても、その場合は大量の未使用券が出るだろう。
まあ、現状大量の未使用券を出しつつ形ばかりの収支均衡 (自治体や企業がチケットを買って補填)させるのが、最も穏便に済むルートのような気もする。
開幕日、本当に15万人が会場に辿り着けるのか
今、西ゲートの来場者予約枠は、埋まらないP&Rシャトルバスや団体バスのために、予約されると実質的に来場手段のない枠を常に確保するという、誰の特にもならない状態になっていると思われる。
実際、開幕日の場合、P&Rシャトルバスが使われないと17時以降はおろか12時以降の枠すら輸送に窮する状態である。
(桜島シャトルバスの11~16時台全ての輸送人数を足しても、5,000人程度にしかならない)
一体西ゲートがフルのパフォーマンスを発揮できる時間帯が、会期中に何度訪れるのだろうか。
西ゲートがダメなら東ゲート、というのも難しい。
4/6のテストランの9時台と本番13日の来場者はほぼ同じらしい。大阪府民の9時台は1,000人しか募集されなかったので、大半は関係者ということになる。残りに枠に府民は2.1万人が割り振られたので、4.7万人のテストラン参加者の残り2.6万人を丁度9時台と10時台に振り分けると、9時台の入場者の合計は1.4万人となる。実際の荷物検査のスピードを見ても、2万人を毎日時間通りに通すのは難しそうだったため、テストランの9時台は1.5万人前後であったと思われる。
この一時間あたりの枠は中々上げられない。時間を指定して予約させている以上、限界値よりも余裕を持って枠を設定しないとならない。
(12時~16時は一つしか枠がないが、「9~11時の枠が取れないから12時以降の枠にした」人々は全員12時以降早々の入場を目指すだろう。東ゲートに人が集中した時、12時の東ゲートはどうなるのだろうか)
そして、東ゲートの懸念点は、前にも書いたが、パビリオンの予約登録が難しいことが周知されたら、当日枠争奪のための待機合戦が始まり、ラッシュの時間帯にかち合うことである。
4/1のダイヤ改正後は、中央線は遅延が常態化し、1時間24本の運行の無理が露呈している。
吉村大阪府知事は、愛・地球博のように開場を早めることを提案している。しかし、それをやってしまうと、上記の懸念点がより顕在化する。そもそも、初日はもう目前で、そんな変更を行なっている余裕はない。
テストランに参加できたの海外パビリオンは25/68棟であり、開幕になんとか間に合わせても運営はほとんどぶっつけ本番となるパビリオンも数多くあるので、開幕後しばらくはトラブルが頻発するのは避けられない。
とにかく、開幕日のトラブルが少しでも減ることを願って止まない。
テストランの答え合わせ
テストランも終わり、万博開幕まで5日となった。まずは前回の記事の答え合わせから始めたい。結論から言うと、概ね予想通りだったが、一部悪い方に予想が外れた部分もある。
1. 海外パビリオンはどこまで完成しているのか
→当初の33棟から、最終的にタイプA18棟、タイプB3棟、タイプC4棟の25棟に減少。一部のパビリオンは関係者だけを入れてテストをしていたようだ。
2. 東ゲートは1万人を何分で通すことができるか
→4/5と4/6で開放したゲートの数が異なるので、一概に比較するのは難しい。1ゲートあたりX線装置は2台で、参加者が記録した動画から1分あたりのゲートを潜った人数を計測したところ、10~14人であった。実際に行った人のリポートから、ゲート数は5日が15、6日が27であったとされている (ただし、報道だと最大31レーンとされている)
荷物検査で詰まると急激に速度が低下するので、1時間あたり平均1.5万人程度が現実的な限界だろうと思われる。
3.1. 予約が必要なパビリオンはおそらく争奪戦になり、何割かの来場者は本来目当てのパビリオンを見れずに終わる
3.2. 来場直後などの当日予約が時間帯では、予約画面では予約可能だったパビリオンが操作している間に一杯になり、予約不可能となる
3.3. アクセスの集中によって通信環境が悪化する
→これらは懸念した通り全て起こったようだ。会場内の予約機も、少なくとも東ゲート前の案内所には1台しかないようで、無予約の人が目当てのパビリオンに入館するのは難しそうだ。
3.4.退場時にゲートが混雑して出れなくなる
→ゲートはさほど混まなかったようだが、4/5の舞洲駐車場利用者は、帰りの出庫が詰まって1時間以上待たされた人もいたようだ。
荷物検査に空港の保安検査のような方式が採用されたことと、ゲートではなく駐車場で詰まったのは想定外だったが、他は概ね予想した通りだった。
4月13日は15万人の予約があると報道されているが、目標来場者数の平均程度のこの人数で、既に交通アクセスの逼迫が露呈している。これについては次の記事で書きたい。
テストランで注目すべきこと
大阪・関西万博開幕まで2週間を切った。しかし、年明けから過熱してきた宣伝が、ここに来て鈍ってきているように思える。どうやら想定していたよりも、かなり準備が遅れているようだ。
正式な開幕に先駆けて4月4日~6日でテストランが行われる。特に5日と6日は大阪府民が参加するため、一般に対して会場が開放される初めての機会となる。
そのテストランで、会場の真の準備状況が一般人に明かされる。当日になって情報が拡散される前に、テストランの個人的な見所を整理しておく。
1. 海外パビリオンはどこまで完成しているのか
今回のテストランに参加するパビリオンが先日公開された。タイプAの参加が6割程度の24棟であり、率直に言うと想定よりも少し多かった。
特にアメリカ館は、3月の初旬にはまだ外装工事が終わってない状態がニュースの映像に映っており、情報発信もほぼないことから、まさかテストランに参加するとは思っていなかった (しかも併設レストランまで稼働予定ときた)。
*4/5追記: 4/4の時点で、5棟 (アゼルバイジャン、イタリア・バチカン市国、ブルガリア、クウェート、マルタ)が不参加となり、タイプAは19棟、海外パビリオンは29/68の参加となった。
一方で、そのほかのタイプB,、C、Xについては、かなり準備が遅れていることが見て取れる。タイプBについては30%の参加、タイプXに至っては一つも参加しない。タイプXのインドパビリオンの入札状況については公式サイトに情報が出ており、何度も入札不調→延長を繰り返していた。それを踏まえると、準備が間に合わないのも納得である。

驚くべきは、外装工事の一切ないタイプCですら、参加できない棟があることである。
11カ国で構成されるコモンズCからは、3/28の時点で4カ国が参加の予定であったが、3/31になると記載が消えていた。理由としては、同じ棟の未完成の国から作業を行いたいと打診されたことが考えられる。

なお、コモンズEに至っては、3/4版のマップを見ても全く参加国が記載されていない、謎のパビリオンである。
コモンズFも3カ国中2カ国の参加であることから、多くの国が集合するコモンズA、B、Dの中にも準備が終わっていない国が存在するだろう。
内装工事や展示工事が主になるタイプB,、C、Xの準備の遅れを見ると、外装が終わっても内装工事が終わっていないタイプAパビリオンが相当数存在しそうだ。
結局、参加表明しているパビリオンが、33/68棟と半分にも満たないことは、準備を遅れを如実に表している
一応補足すると、テストランに参加しないことが、準備が遅れている・開催までに間に合わないとイコールではない。国によって独自の事情もあるだろう。また、これからテストラン参加国が増える可能性もある (逆に減る可能性もある)。
さらに、シグネチャーパビリオンなどの海外パビリオン以外のパビリオンは完成しており、テストランには32棟中30棟が参加する。これを勘定に入れると63/100棟、2/3は完成していると言える 。
それでも、この状況には、まずシグネチャーパビリオンや企業館が労働力を抑えたことで、海外パビリオンへの建設会社のリソースを奪ったことが大きく影響している (計画上の建築作業の期限は2024年10月中、改装・内装工事の完了は2025年1月中旬であったが、それを過ぎても建設工事・内装工事を行なっていたシグネチャーパビリオンもあり、工事の集中を招いた)。
テストランでは建設中のパビリオンの撮影が禁止されているが、状況はSNSなどで報告されるだろう。海外パビリオンは予約の無い人々を吸収する役割があるが、その機能がどれほど果たせるか、4/6には明らかになるだろう。
2. 東ゲートは1万人を何分で通すことができるか
今回のテストランでは来場手段と来場時間が決められており、最も人が集中するのは4月6日の11時である。

11時に1万人が東ゲートから入場するが、入口では手荷物検査があるので、入場にはある程度時間がかかる。
愛・地球博のメインゲートであった北ゲートでは、開場前に9,000人が並んだ時、行列を捌くのに約55分掛かった (開場してから追加で並ぶ人もいたので、9,000人を捌くのに掛かった時間はこれよりも短い)。
また、25万人超が来場し、3万人が開場時 (8:25)に並んだ日は、列が途切れず11時時点で11.5万人が入場していたことから、愛・地球博の2開場4ゲートで捌ける人数の限界は一時間当たり4.3万人だったと推測できる。
1ゲートあたりのレーン数は今回の方が多そうだが、ゲート数が2つしかないので愛・地球博の実績を超えることはなさそうである。
さらに、今回の万博では9~12時台で1時間毎の来場時間予約を行なっており、少なくともこの予約枠の人数分は確実に捌けないといけない。
これらのことから、4月6日の11時台に、1万人が入場するのにかかる時間から、おおよそのゲートの限界と、来場時間予約の一時間毎の枠を予想でき、予約状況から一日の来場者を逆算することができる。
元々万博協会の運営費で賄う予定だった警備費を国が負担することを決定した際、当時の西村経済産業大臣は理由として、
「警備に高い水準が求められており、万全を期すために必要な費用は国が前面に立って確保する」
と説明していた。万全な警備体制を敷くためには、手荷物検査にもそれなりに時間を掛ける必要があるが、100レーンあっても手荷物検査に30秒かけていると1時間に1.2万人しか捌くことはできない。それでは、とても来場者目標を達成することはできない。
来場者目標を諦めて警備の水準を上げるか、それとも警備費の国庫支出の名目をかなぐり捨てて手荷物検査をおざなりにして来場者を稼ぐのか。万博協会の方針がここでわかる。
(最も、輸送手段の限界から、各ゲートにつき1.2万人/時間以上は捌けても意味がない可能性がある。特に西ゲートの9時台は、予約したのに時間内に会場に辿り着けない人が一定数発生すると思う。この辺りはまた後日書きたい。)
3. 開場内は起こりそうなトラブル
6日には2.2万人の一般客が来場する。2.2万は、目標平均来場者数の約1/7であり、この人数でトラブルが多発していてはお話にならない。しかし、この人数でも次のようなトラブルは起きるのでは無いかと推測している。
- 予約が必要なパビリオンはおそらく争奪戦になり、何割かの来場者は本来目当てのパビリオンを見れずに終わる
- 来場直後などの当日予約が時間帯では、予約画面では予約可能だったパビリオンが操作している間に一杯になり、予約不可能となる
- アクセスの集中によって通信環境が悪化する
- 退場時にゲートが混雑して出れなくなる
最後の退場時の混雑は、主にメトロを使うテストランではさほど問題にならないかもしれないが、バスの時間が決まっている西ゲートの場合、ゲートを出られず予約したバスに間に合わない人が続出するのでは無いかと思っている。
個別のパビリオンの問題はパビリオン毎に改善を図るだろうが、上記の懸念点は構造的な問題なので対処は難しい。
万博協会はポジティブな拡散による宣伝効果を狙っているようだが、かえって逆効果になってしまう可能性は低くない。どのような結果になるか、期待してみておこう。
並ばない万博の完全崩壊、~後は野となれ山となれ~
万博開幕までいよいよあと1ヶ月となったが、残り50日を切ったタイミングで、大きな報道が飛び込んできた。
2025年2月25日、万博協会より正式に、入場ゲート前での当日券の発売がアナウンスされた。同日には、通期パス・夏パスの予約制限の解除、当日券と通常券の中間のような簡単来場予約チケット (仮称)の導入など、様々な変更が一挙に報じられた。



中でも驚くべきは、パビリオンの予約に関する記述である。テーマ館やほぼ全ての企業館は、事前の予約が必須であったはずであるが、最新の記述を見ると、事前予約は必ずしも必要ないと書かれている。

実は、この制度変更は、はっきりとした時期はわからないが、2ヶ月前抽選の結果が出始めた2月13日~2月19日頃に突如としてチケットサイトに追加されたQ&Aでも示唆されていた。

これが後付けで急遽追加されたのは、他の言語にこのQ&Aがないこと (2025/3/13日現在)からも明かである (なんなら、通期パスについても11時からしか入れないという、以前の仕様のQ&Aが削除されていない)。


(同じ内容のQ&Aが公式サイトにもあったが、ページの通し番号から明らかに超早期割特別抽選や2ヶ月前予約の結果が出始めるタイミングよりも後に公開されている)



これまでの書き方から、予約を行なっているパビリオンに入るためには、基本的には2ヶ月前抽選または7日前抽選 (+超早期割特別抽選)を行う必要があったはずで、当日当落は枠は3日前〜前日空き枠登録と同様に、あくまでキャンセルや予約が埋まらなかったパビリオンのみが対象であった (空き枠登録と当日登録が同じ扱いの枠なのかは、万博協会の返答にブレがあったが、現在ではそれぞれ一枠ずつということに決まったようだ)。


ところが、追加されたQ&Aには、
「特定のパビリオンやイベントを確実に観覧したい方には事前の予約もおすすめですが、事前予約の割合は全体の一部のみで、特定のイベントを除き、多くのパビリオン・イベントに十分な当日枠がございます。」
とあり、むしろ当日枠の方が潤沢に用意されている可能性すら感じさせる書き方になっている。
これは相当大きな方針転換である。
予約システムを利用するパビリオンの多くは、体験型のパビリオンであり、一枠当たりの定員が決まっている。そして、前回も述べたが、この定員は展示型やシアター型のパビリオンに比べて非常に少なくなっている。
例えば紹介記事と本人のXから、落合館の会期全体のキャパは約50万人だそうだ。計算すると、1日あたりの人数は約2,700人、一回当たりの収容人数は150人弱になる。
落合館は内容的に展示+体験のハイブリッド型のようなので、純粋な体験型であるモンスターハンターや河森館の超時空シアター (1回30人)よりは多いが、それでも万博の1日あたりの目標平均来場者数15.4万人の1/1000以下であり、枠が余ることは基本的にはないだろう。であれば、このようなパビリオンは事前の予約が必須であったはずで、その方がいざ会場に入ってからその日に入館できないことが分かる・・・、といった事態を避けられるはずだ。しかし、この方針転換が与える影響は、そんなところに留まらない。
この突発的な変更がどのような影響を与えるか、一つ一つ見ていこう。
低すぎる事前抽選当選確率
従来は、一つの抽選枠が、超早期割特別抽選、2ヶ月前抽選、7日前抽選で割られていた。
(前回の記事では、抽選ごとに枠が割り振られず、2ヶ月前抽選で全て埋まったら7日前抽選は行われないという仮定で書いていた。それは、一枠数十人の枠を抽選ごとに割り振ってしまうと、一回一回の当選確率が極端に下がってしまうので、その方が可能性が高いと思っていたからだ。しかし、どうやら最初から一部の例外を除いて各抽選毎に枠を割り振っていたようだ。)
これに当日枠が足され、さらに当日枠を十分に確保しようとすると、当然各抽選毎の枠は少なくなる。
以下例として、150人一枠の抽選枠がこの方針変更によってどれほど当たりづらくなったのかというイメージを示す。「十分な当日枠」がどれほどかはわからないが、半分以上確保しようとすると、それだけ2ヶ月前抽選と7日前抽選の当選確率が減少していく。以下の例では、超早期割の枠を30人、当日枠を50%以上確保すると仮定する。

2ヶ月前抽選に5万人が申し込んだとしよう。5万人は1日あたりの目標平均来場者数の1/3以下であるが、それでもその内僅か0.05%の希望が被ると、5人に1人は落選する計算になる。
X上には特に開幕日の落選報告が数多く挙げられていたが、この例を見ているとむしろ当選する人の方が少ないのが自然なことが分かる。万博に熱心な層は、平日を狙う、時間を夕方以降にするなどの対策を編み出しているようだが、一枠150人でもこの確率なので、一枠数十人のパビリオンを事前に確保するのは容易ではない。
このように、最早事前抽選は「当たればラッキー」というものと考えた方が良さそうだ。
(一部のパビリオンは、旅行会社の団体旅行ツアー用に枠を割いているようだ。ツアーと重なる日は他の枠が更に圧縮されることになる)
では、この変更によって当日気軽にこのようなパビリオンを楽しめるようになったかというと、全くそうではないのが二つ目の問題である。
当日枠は会場直後に取り合いになる
事前予約の枠を削って作り出した当日枠は、あくまで「当日に予約できる枠」である。そのため、タイミングが異なるとはいえ、予約が必要なことには変わりない。この点が、並べば入館できた従来の万博との大きな違いである。
では、その枠がいつ解放されるかというと、デジタルサイトの場合万博来場の10分後からである。会場内の予約機を使う場合も、当然来場後ということになる。そして、当日枠は先着順である。
元々の枠が限られているので、当日枠を全体の50%以上確保していても、結局当日枠は一枠10-100人程度に限定されるだろう。そうなると、人気のパビリオンについては9時に入場した来場者によってほぼ全ての枠が埋まってしまうことになる。
そうなると、朝9時に入場希望が集中しやすくなる。すると、次の問題が浮き彫りになる
朝の通勤時間帯に来場者が殺到し、万博来場者以外に影響が出る
そもそも、様々なチケットの種類の導入の目的は会期後期の来場者の集中を緩和することであり、複雑な予約制度が導入された一番の理由は、道路や地下鉄の混雑を防ぐことであった。



ところが、通期パスの利用制限が撤廃され、さらに当日券が販売されることによって、事実上この目的は形骸化している 。
それどころか、通気パスの利便性を下げてまで (9-11時の入場制限)朝の混雑を回避しようとしていたのに、方針転換後の制度では朝9時の来場を促すようなシステムになっている。
9時に来場予約をした人は、当日券の来場者よりは優先されるが、来場予約をした人同士の来場順は恐らく先着順だろう。すると、せっかく来場予約をしたにも関わらず、当日枠を確保するために朝から並ぶ、という本末転倒な事態が発生する。

9時に先着しようとする人は、当然それよりも早い時間帯にゲートの前に並ぶことになる。そうなると、朝の通勤ラッシュの時間と丁度バッティングし、万博に来場しようとする人だけでなく、大阪市で昼間生活する人々に影響が出てしまう。2年間に渡って、5回更新されていた来場者輸送計画は、始まる前から頓挫してしまっている。
そもそも疑問だらけの輸送計画
愛・地球博のメイン交通であったリニモや地下鉄東山線はお世辞にも十分な交通網であったとはいえないし、自家用車の乗り入れも同様にパークアンドライドが採用されていた。この点は今回の万博と類似する。
しかしながら、パークアンドライド駐車場は周辺と空港の6箇所合計9,600台分が用意され、リニモも二方向からアクセスが可能、会場が長久手と瀬戸の2会場に分散される、そして公式では推奨されていなかったが、周囲の民間駐車場を使うケースも多かった。
( 最大の入場者を記録した9月18日では、281,441人の内37.1%が鉄道、6.2%が最寄駅以外からのシャトルバス、2.7%が路線型直行バス、18.8%が自家用車のパークアンドライド、7.1%が団体バス、そして全体の28.7%が公式の想定していない方法で来場しており、その大半を送迎や民間駐車場が占めた。)
今回の万博のP&Rシャトルバスは舞洲、堺、尼崎の三箇所だけであり、会場の隣の舞洲が3,450~6,240台 (団体用バスの受け入れに応じて変動)、南大阪の堺が2,000台、大阪と接する兵庫県の尼崎が3,000台で、合計9,450~11,240台と台数だけ見れば愛・地球博を上回っているように見える。しかし、堺も尼崎も駐車場は市内の端にあり、ここにわざわざ車を停めてバスで会場に向かう人々がどれくらいいるのか、甚だ疑問である。
そして、想定以上の来場者輸送を支えた民間駐車場は、今回の場合全く活用できないため、愛・地球博と同等の輸送力ではまるで足りないことは明白である。

そして何よりも、今回の万博では、全てのバスと舞洲駐車場を利用する自家用車が此花大橋を経由する。理由は明らかではないが、来場者輸送計画に夢咲トンネルは含まれていない (タクシーがどちらの経路を使うのか不明)。
さらに会期中の一般車両については、咲洲-夢洲間の一時停止の禁止や夢洲外周道路の通行止で対処するようだが、これで対処できるか疑問である。関空からの白タクの規制を強めているとはいえ、万博期間中のライドシェアの緩和まで行っており、これらのドライバーが規制を知っているのか、また守るのか、という懸念がある (万博期間中のライドシェアの必要性については今回は詳しく扱わないが、そもそもタクシーによる会場への想定輸送人数が22.7万人中2150人しかいない時点で、万博によるタクシー不足が起こるとは思えない)

桜島シャトルバスについては、現時点で少なくともネット上に現金が使えるかの情報が落ちていない (会場内の周遊バスe Moverは完全キャッシュレス)。桜島シャトルバスはピークの時間帯は5分に1本間隔で出るらしいが、現金主義の年配世代が利用すると、完全キャッシュレスだと乗れなくて降りるまでに時間がかかり、現金対応だと支払にもたつくと、どちらにしても短時間でバスを矢継ぎ早に発進させる障害になりそうである。
そもそもこのバスの定員は77人らしく、1時間あたり12本での輸送人数は1,000人弱。計画通りに運行しても、午前中の輸送人数は4,000人に満たない。来場者輸送計画における一日の最大運搬人数は1.86万人だが、会期後半の便数の多い方で計算しても、一日当たり1万人弱しか運べないのだが、朝は1便2台で運行するのだろうか・・・。
(4/2追記: どうやら朝は最大1便5台、一時間60台ペースで運行するようだ。)

KansaiMaaSアプリ上で確認したところ、開幕まで1ヶ月を切った3/16現在でも、開幕日の8時台の席を取ることができる。
開幕日は多くのイベントが集中するため混雑が予想されているが (この点は、平準化に成功していると言える)、14000人に満たないであろう枠が埋まっていない。予約なしで乗車する人が大半なのだろうか。その場合、桜島駅ではバスに乗れない人が続出しそうだ。
(全ての一般枠は少なくとも99席以上空いていた。なお、検証したところ車いすの枠はバス一台につき2人程度のようだ)
(4/2追記: 4/2時点だと、開幕日の8時台は売り切れていた。それ以外の時間帯の一般座席は依然99席以上開いていた)

以上より、桜島シャトルバスはメインの交通手段の一つに数えていいか疑問である。
特に、西ゲートから9時台に来場予定の人は、一体どうやって辿り着く予定なのだろうか。予定通り桜島から15分で着くとして、8時10分の始発から9時台に会場に着くのはわずか19便、1便1台だとすると1,500人程度しか輸送できない。
各ゲートの1時間当たりの来場枠は公表されていないが、流石に1,500人ということはないだろう。しかし、例えば1万人だとして、残りの8,500人はほとんどがP&Rシャトルバスで来ることになる (団体バスは10時以降に到着するものが多く、タクシーではそんなに輸送できないだろう。むしろ、タクシーが殺到すると、バスの運行に影響が出る)。そんなに駐車場が使われるのだろうか?
(4/2追記: 一時間当たりの最大輸送人数は4000人。ただし、これでも依然P&Rシャトルバスをフル活用しないといけない)
利用者の少なそうな桜島シャトルバスであるが、客がいる・いないに関わらずバスはダイヤ通りに運行しなければならない。舞洲に自家用車が集まる中、1時間12便のシャトルバスとP&Rシャトルバスが運行する。シミュレーションでは舞洲での渋滞は発生しないことになっている。事故が起こらなければ良いが・・・。

先ほども述べたが、来場者輸送計画では、シャトルバスやP&R駐車場が限界まで活用されることが前提であるが、P&R駐車場の料金設定や桜島以外のシャトルバスの本数が極端に少ないこと、及びシャトルバスのキャパシティを考えると、相対的なメトロの負担は想定を超えるのではないかと危惧している。
つまり、協会が想定する22.7万人よりもはるか手前の段階で、メトロに来場者が集中する可能性が高い。
〇日来場者数が、10 万人程度までにおいては、駅シャトルバス等の輸送力及び万博 P&R駐車場の収容能力に比較的余裕があることから、愛知万博ベースの機関分担率で輸送が行われると考えている。
〇しかしながら、日来場者数が、11.9 万人に達すると、まず、駅シャトルバス等の輸送力が、夢洲交通ターミナルや各駅バスターミナルの受け入れ容量及び各バス事業者が運行できるバスの便数等から、限界に達する。
〇さらに、日来場者数が、18.6万人に達すると、万博P&R 駐車場の自家用車が受け入れ限界に達し、22.7 万人に達すると、団体バスも受け入れ限界に達する。
〇こうしたことから、日来場者数が、おおむね 20 万人を超えたあたりから、輸送における鉄道の割合が加速度的に増加するため、それに備えた対策が必要となる。
(来場者輸送計画より、再掲)
大阪メトロは1日に約230万人程度が利用すると言われており、需要集中は大阪市内で働く多くの人々に影響を与え、経済的にも損失が出る。万博の経済効果を持ち上げる人もいるが、経済効果はこうしたマイナス面を考慮せず、ただ動いた金額によって決まる値で、全く当てにならないことは過去に何度も述べた。
今回の方針転換は、元から怪しかった来場者輸送計画をさらに破壊し、メトロの通勤ラッシュの通勤ラッシュ時間帯への集中をより招く結果になってしまうと思われる。
通期パスの利便性は向上するのか
今回の変更によって、通期パスの1. 毎日9:00-10:59までの来場制限、2. 10月4日-13日の来場制限がそれぞれ撤廃された。また、当日枠の採用によって、予約が必要なパビリオンも通期パスで毎日入れるようになったかのように見える。
しかし、来場予約枠が3つしかないという最大の欠点は改善されていない。
今回の変更によって、通期パスでも朝9時から来場できることにはなった。もし朝9時から来場できれば、2ヶ月前や7日前抽選を取らずとも、パビリオンの登録を行うことができる。一見すると、通気パスによって予約が必要なパビリオンを楽しむ余地が増えた用に見える。
しかし、そのためには朝9時の来場予約を取らなくてはならない。今までの予約状況を見ると、まず真っ先に朝9時の時間帯が埋まっており、今後当日登録の仕様が周知されればされるほど、益々朝9時の枠は埋まりやすくなっていくと推察される。
そうなると、例え1枠を常に残していたとしても、前日や二日前に朝9時の枠を取ることはほぼ不可能だろう。朝10時の枠が空いていればまだ良いが、11時以降しか空いていなかった場合、結局仕様変更の恩恵を受けることはできない。
10月4日-13日の来場制限の撤廃は、単純に使える日が増えたので、利用者にとってはプラスだが、前述の通り本来の閉幕期の混雑回避という目的を完全に見失っており、利用者が増えることが社会にとってもプラスとは言い難い状態になっている。
結局、通期パスの有効な使い方としては、仕事終わりに毎日通うために使うか、リタイアして時間のある人がのんびりと使うかくらいで、上記のいずれにも当てはまらない人にとっては、単純に割引の一日券を購入した方が利便性が高いだろう。
実際、愛・地球博では、前者の使い方で各国のレストランを巡るのが地元民のちょっとした流行になっていたようだ。最も、今回の万博では毎回入場登録が必要なので、その度に不便さを感じることにはなるだろう。
(ただ、ここまでの大転換を大々的なアナウンスなしで決めた万博協会なので、もしかしたら来場時間を登録していなくても顔認証ゲートを潜ることができるようになるかもしれない 。その場合、通期パスの利便性は大幅に向上する。その時の混雑に目を瞑りさえすれば。)
なお、同時に会期の初期に入場した人は6,000円引きで通期パスを購入できるようになったが、愛・地球博でも似たような (一日券の値段との差額を支払うことで、全期間券に変更できた)制度は存在しており、あくまでリピーターを増やすのが目的なので、別に通期パスを投げ売っているわけではない。
(ところで、割引率を最大にするなら、開幕後に3,700円の夜間券を購入して入場するのが最も効率がいいが、どの券であっても6,000円引きで購入できるようになるのだろうか。)
当日券によって気軽に万博を楽しめるのか
次に、当日券を利用する人のことを考えてみよう。ターゲットは、主にパソコン・スマートフォンになれていない年配世代と、海外旅行者になるだろう。
当然当日券の利用者は、ほぼ万博IDを持っていない。そのため、P&Rシャトルバスは使えない。また、万博IDは登録できないのにKansaiMaaSは使えるという人はほぼいないだろうから、桜島以外の駅からのシャトルバスは利用できない。
さて、なんとか会場に辿り着き、当日券を入場制限に引っかかることなく購入して、無事に入場できたとする。テレビで宣伝しているようなパビリオンに並ぼうとしてから、予約が必要であることに気が付く人もいるだろう。開幕1ヶ月前になってようやく公開された開場地図によると、会場内の予約機は9箇所。予約機を見つけて当日登録をしようとしても、朝一番を逃すと、人気のパビリオンの予約は既に終わっているだろう。
では予約が不要な海外パビリオンはどうかというと、タイプAについては開幕時に入場できるパビリオンが何棟あるかもわからない状態である。3/14日にようやく2カ国の内装工事が終わったことが報じられた (ハンガリーとルクセンブルク。特にルクセンブルクは間に合う筆頭候補だと思っていたので、驚きはない)。
一方で、未だ建設工事が終わっていないパビリオンは一つや二つでは済まないだろう。 14日時点で建設工事の完了証明が交付されたのは12カ国らしいが、建設工事の完了証明を申請するタイミングは国によって異なるので、流石に建設工事自体が終わっている国はもう少しあるとは思う。とはいえ、未だに建設工事を行なっている国が、これから1ヶ月足らずで内装工事、展示工事、スタッフの訓練までを終えて開幕を迎えることは不可能である。
全てのパビリオンが開幕日までに完成しないのは万博では珍しくないが、二桁以上のパビリオンが完成しなかった万博は聞いたことがない。ここまで来たら、どこまで記録を伸ばせるかに楽しみを見出す段階に来ているように思う。
結局、予約が不要で工事が終わっているタイプBやタイプCの小規模パビリオンを回るか、大屋根リングに登るか、日本側が出店しているレストラン (当然海外パビリオンに付随するレストランが営業している可能性は低い)を回るかくらいしか、開幕直後に確実に楽しめると断言できるものはない (その大屋根リングすら、 一度に登れる人数には1.5万人の制限がある)。
万博のPRが足りていないという意見もあるが、正直大々的にPRできるものはほとんどない。シグネチャーパビリオンや企業館など日本発注のパビリオンは入館できる人数が限られるので、あまりPRし過ぎても却って入れない不満を溜めてしまうし、タイプAパビリオンはできていないので宣伝できない。小規模の海外パビリオンは、非常に申し訳ない言い方になるが、基本的には数合わせで、メインにはなり得ない。大衆向けに宣伝したところで興味を惹かれる人は極々限られるだろう。
こう考えていくと、今の大屋根リングに中心に据えたPR戦略はある意味必然なのかもしれない。大屋根リングに価値を感じてもらうことが、来場者にとっても、万博協会にとっても都合がいいのである。
(ところで、海外パビリオンがこうも完成していない中、開幕日にAdo氏のライブに行く人はどこで時間を潰すのだろう)
あとは野となれ山となれ
以上のように今回の方針転換は、特定のパビリオンを楽しみにして数ヶ月前から来場予約と抽選申し込みをしていた万博に積極的な層にとっては当選確率が激減し、確保できなければせっかく来場予約をしたのに朝から並ぶ羽目になり、毎日通う万博マニアにとっては利便性が特段向上せず、当日券を使うライト層や年配世代、外国人観光客にとってはゲート前で追い返されなかったことはプラス要素ではあるものの、当日あらゆる行動が制限される (ゲートで追い返されて他の観光地を回った方がい良い可能性すらある)と、ほとんどの来場者にとっては特に得をもたらさない。
一方で万博協会は、達成が不可能になった前売りの目標と来場者輸送計画を放棄して、会期後半に来場者が伸びてチケット販売目標を達成するという可能性を手に入れた。
確かに、以前の予約システムでは、会期後半の伸びは期待できなかった (むしろ、それを抑制するための予約システムだった)。そのままでは赤字確定であり、また実際の運営上、会場まで来た人を突っ返すのは現実的ではない (クレーム対応する人員も足りないだろう)ので、遅かれ早かれ当日券は販売されていただろう。
しかし、大層に掲げた「未来社会の実験場」というコンセプトは、こんな行き当たりばったりで達成できるものなのだろうか?
大阪・関西万博におけるコンセプトは、「People's Living Lab(未来社会の実験場)」である。このコンセプトは以下の一連の活動を通じて実現される。 大阪・関西万博では、会場を新たな技術やシステムを実証する、「未来社会の実験場」と位置づけ、多様なプレーヤーによるイノベーションを誘発し、それらを社会実装していくための、Society 5 . 0 実現型会場を目指す。 例えば、人の流れをAI等の技術でコントロールすることによる、会場内での快適な過ごし方の実現や、 キャッシュレス、生体認証システム、世界中の人と会話できる多言語システムの実装等が想定される。 また、このコンセプトを実現するために重要になるのが、Co-Creation(共創)である。ここでの共創とは、 多様な参加者と共に大阪・関西万博を創りあげることを意味する。 大阪・関西万博では、会期前から大阪・ 関西万博に関わるネットワークを広げていくことを通じて、会場内外からこの壮大な実験に参加して未来社会のデザインを共創することを目指す。
筆者は、一貫して万博がガラガラになることはないと考えている一方で、来場者目標は達成できないと考えている。
過去の例と、日本人のお祭好きを考えると、これだけ国家のリソースを割いているイベントの1日の平均来場者が8万人を下回ること (会期中の来場者が1,500万人以下になること)はないだろう。1日8万人は目標の半分の人数であるが、それでもUSJや東京今日ドームの一日の来場者数を超えており、会場は大盛況に見える。
だが、本記事で検討したように、その目標の半分の人数でも来場者をスムーズに会場に運べるかは大いに疑問である。メトロ以外の輸送手段が本当に来場者輸送計画上の数字を出せるかはかなり怪しい。そうなると、メトロの負担増は避けられない。
万博協会は最近やたら愛・地球博と比較してチケットが売れていると強調するが、一体何を言っているのかと言う気持ちになった。
目標1,500万人の愛・地球博の前売り計画を、目標2,820万人の今回の万博が超えるのは当たり前である。
そして、何度も強調するが、愛・地球博の実績2,204万人は、会期後期の長蛇の列と、協会の用意した輸送力の超える来場者を運搬した周囲の民間駐車場の存在なしでは達成し得なかった。
今回の方針転換によって、当日券によって一部の予約不要パビリオンに待機列ができる可能性が高まった (待機列は、会場のリソース消費を抑え、本来会場で捌けないはずの来場者数を捌くことに貢献する)。しかし、輸送力については、何も増強できておらず、むしろメトロへの集中を招き、却って大阪市民の生活を圧迫することになる。
万博協会は口コミによる来場者の増加を期待しているらしい。確かに、短期的な印象操作によって、大衆が煽動される事象は、この一年間に限っても何度も目撃された。
今後、今以上にテレビ、ネットの両方から万博のプロモーションがされていくのは間違いない。その時、万博に殺到するのか、それとも低調なまま終わるのか、どちらに転ぶかは誰にも予想ができない。
だが、万博に愛・地球博の閉幕期なみの人が殺到した場合、それを捌くリソースがないことは、他ならぬ万博協会何年にも渡って発信してきた。今回の方針転換は、それに真っ向から反するもので、円滑な来場者輸送と来場者目標 (チケット販売計画)の達成は、二律背反の状態になってしまっている。
後は野となれ山となれ。2030年に開業予定のカジノIRを前に、大阪市民の生活をかけたギャンブルが始まろうとしている。
万博チケット販売のデッドラインが近づく
いよいよ2025年が始まり、早いもので万博開催まであと80日を切った。1月13日より、パビリオン・イベントの2ヶ月前抽選のエントリーが開始され、あらゆるメディアで万博が取り上げられる機会が増えてきたように思える。
そして、「機運情勢」が (それが例え万博協会の想定に足らないとしても)広がっていく中で、今回の予約制、特に通気パスの問題点がようやく共有され始めた。
今回の通期パスは30,000円で、物価水準を考慮しても、2005年の愛・地球博の17,500円に比べて安いとは言えない。しかし、その使い勝手には天と地ほどの違いがあり、その仕様をきちんと把握せずに購入してしまって人々から、現在次々に不満が出ている (特に、万博の熱烈な支持者と思われる方々が、Xのスペース上で特に通期パスの仕様について不満を漏らしていたのが印象的であった。が、チケット販売時にはこの仕様は公開されていたので、むしろ今までどうして知りもしない万博を支持できたのかは疑問である)。
チケット入手後の予約
改めて、今回の入場チケット入手後の各種予約についてまとめよう
・来場日予約→来場時間&来場ゲート予約
まず、来場日時を指定しないと、その後の抽選に進むことはできない。
・シャトルバス・駐車場の予約
西ゲートを選択した場合、入場時間に合う駐車場を万博P&R駐車場予約システムより登録するか、駅シャトルバスをKANSAI MaaSより登録する必要がある。先に駐車場を押さえても、来場時間にゲートがいっぱいだった場合入場できないので、駐車場の予約か来場時間を変更する必要がある。
・パビリオン予約
来場予約した日について、2ヶ月前抽選を最大5枠まで指定できる。なお、当選は最大で1枠のみであり、全て外れる可能性もある。
その後、7日前抽選が同じ仕様で行われる。ただし、現時点で7日前抽選専用の枠が確保されているかは定かではないので、パビリオンによっては2ヶ月前抽選を逃した時点で予約不可能になる可能性がある (一部イベントでは、原則として2ヶ月前抽選以外が行われないことがアナウンスされている)
・空き枠&当日予約
さらに、3日前~前日朝9時までに、空いている枠があった場合、先着で1枠予約できる。また、当日も、入場10分後から1枠ずつ空き枠を先着で予約できる。なお、当日枠は1つずつしか持てず、再度予約するためには予約を消化する必要がある。
・通期パスと夏パスの仕様
一度にできる来場日予約は、通期パスが3日、夏パスが2日である。予約を消化するか、取り消すことで新たな枠を使用できる。入場時間は11時以降に限定され、通期パスは最後の10日間は使用できない
・その他仕様
一度の来場日の中で取れる枠は最大3枠 (超早期割の特別抽選利用時のみ4枠)。2ヶ月前予約、7日前予約、空き枠予約を全て取った場合、どれかの枠を消化するまで当日予約は行えない
一度決めた来場日内の来場時間・ゲートは自由に変更できるが、来場日自体の変更は3回までしかできない。3回変更した後に入場日を逃した場合、購入券種の入場期間内且つ、当日に空き枠がある場合のみ当日予約と入場が可能。
他の人のチケットをまとめて予約抽選する場合、来場日予約とパビリオン予約の両方で「他の方がお持ちのチケットもまとめて申し込む」から全てのチケットについて予約と抽選を行う必要がある。まとめて来場日予約をしたとしても、マイチケットから一枚一枚抽選を行った場合、抽選はバラバラに行われる
まとめて他の万博IDに紐づいているチケットを予約抽選登録した後、来場日を変更する場合、IDごとに変更や取り消しを行う必要がある
以上が万博チケットと予約の主な仕様である。他にもUIが分かりづらい、一つのアプリで完結せずにブラウザや別のアプリにすぐに飛ばされるなどの問題もあるが、チケットと予約の仕様に限っても、大規模に人を集めようとしている割には、ユーザーフレンドリーではない仕様ばかりである。
予約制度の問題点
まず、人気のパビリオンは、2ヶ月前抽選の時点でほぼ枠が埋まると思われる。これは、今回抽選対象のパビリオンの多くが体験型のコンテンツになっており、1日に収容できる人数が展示型のパビリオンに比べると遥かに少なくなることが大きな原因である。
例えば、大阪ヘルスケアパビリオン内の一部であるMonster Hunter Bridgeの会場は直径12mであり、面積は約113平方メートルである。この広さでAR体験を提供するので、一度に体験できる人数は50人程度と推測できる。現在の情報だと1日の枠数は17枠らしいので、1日に収容できる人数は1,000人以下になると思われる。
このキャパシティであれば、どんなに万博が不人気でも抽選枠は争奪戦になる (実際、10月の超早期割の特別抽選において、X上に多数の落選報告が挙げられていた)。これは最もキャパシティが少ない例の一つであるが、体験型コンテンツは一度に収容できる人数が限られる上に、回転率を上げることもできないので、1日に数万人を収容することは難しいと思われる。
そのため、いくら会期中にパビリオンに対する良いクチコミが広がったとしても、実際に入れるのはその時点から2ヶ月後が最短となる可能性が高い。これでは、せっかく高めた機運に水が差されてしまう。
更に、通期パスの使い勝手の悪さは、会期中のリピーターの獲得にとって大きな障害となる。2ヶ月前予約を活用しようとすると、開幕日から3日間を予約した場合、次の来場日は最短で6月13日になってしまい、その間は通期パスで入場できない。これでは、何のための通期パスかわからない。そのため、通期パスを「複数枚の1日券」として利用する使い方は非常に効率が悪い。
愛・地球博の全期間券の売上は、前売りでは7.4万枚に留まった一方で、開催後に22.9万枚と前売り期の3倍の枚数を売り上げた (それに加えて、普通券から全期間券への引き換えが100,957枚ある)。枚数としては全券種中2.3%に留まった全期間券による入場者数が、全体の22% (約490万人)を占めており、平均入場回数は12回に上った。これらのことから、愛・地球博において、全期間券は地元の人々を中心としたリピーターの獲得の原動力となったことが分かる。
(2025.02.25 計上し忘れていた普通券からの引換分を追加、数字を一部修正)
全期間券の利用者には、仕事終わりに気軽に入場し、晩御飯を食べて会場を散策して帰る、という使い方をした人も多かったという。
今回の通期パスも、一応そのような使い方はできないことはないが、来場予約枠を1枠空けた状態で運用し、なおかつ毎回来場日時登録をする必要がある。そこまでして仕事終わりに万博会場に行きたい人がどのくらいいるのか、甚だ疑問である。
予約期間が始まって直ぐに予約抽選登録している、比較的万博に対して好印象を持っていると考えられる人々からも不満が出ているが、会期中になったら更に混乱が広がると思われる。
厄介なことに、現状希望するパビリオンが予約可能か否か、実際に予約画面までいかないと確認する方法がない。8月13日以降は、2ヶ月前予約ができないので、これ以降にチケットを購入した場合、せっかくチケットを買ったのに希望するパビリオンの抽選すら行えないという可能性もある。
また、直前にチケットを買った場合、早い来場時間が埋まっている可能性が考えられる。この場合、7日前予約をしようとしても、来場時間後 (それも入場時間すぐの予約はできない)の限られた枠の抽選しか行えない。
これらを総合すると、万博のチケットは現実的には来場予定日の2ヶ月以降に購入した場合、ただでさえ低い使い勝手が更に低下する。
万博協会内では、「会期が近づき各パビリオンの内容の詳細が発表されれば機運が高まる」という楽観論があるようだが、筆者は逆効果の面もあると考えている。それは、万博の予約システムが「どうしてもこのパビリオンやイベントに行きたい」という需要に応えられるシステムになっていないからである。
予約が必要なイベントは世の中に溢れているが、一般的な予約制の場合、個人情報登録→抽選→チケット購入というスキームである。外れた場合、イベントには参加できないが、料金は発生しないし、日程は多くの場合1〜2日に限定されるので、諦めもつき易い。
一方で、万博の場合、個人情報登録→チケット購入→来場日指定→抽選という流れのため、抽選に参加する前に料金を支払う必要がある。外れた場合、一応あと2回まで来場予定日を変更して再抽選にチャレンジできるが、そこまでモチベーションを維持できない人も多いだろう。そもそも抽選結果が出るまでのステップが多すぎるので、その前の段階で諦めてしまう人がいても全くおかしくない。
せっかくパビリオンの情報が広まっても、直ぐに入れないことが分かったら高まった機運も冷めてしまうだろう。それを考えると、2ヶ月前抽選が行われ始める2月中旬の段階で、開幕日から数日の抽選予約枠はほぼ埋まっている状態にならないととても開幕日周辺の来場者目標は達成できないだろう (開幕日は色々なイベントが集中するので達成できるかもしれないが、その次の日以降は厳しいだろう)。
各種予約システムが導入された最大の理由は、閉幕直前の超過需要を会期前半に平準化するためである。ならば、この目的が達成されるためのデッドラインはもう直ぐそこまで迫っている。
機運は高まっている。問題は高すぎる目標である
実質的なデッドラインを目前に控えてなお、入場チケットの売り上げはお世辞にも芳しいとはいえない。超早割の販売期限の10月第一週は、100万枚以上の売り上げを記録したが、その後の2024年末までの11週間の週当たりの平均は2.9万枚まで落ちており、4月から10月までの平均値の21.6万人を大きく割り込んだ。
一方で、チケットの種別で見ると、開幕券は4月から10月第一週まで1週平均1,200枚だったのが、その後は平均2,521枚となり、前期券が平均2,100枚から3,764枚と、約2倍に増加している。
石毛事務総長は、個人向けのチケットの売り上げが伸びていることを超早期割の販売期間が終わった10月中旬段階で強調していた。
それは、ある意味で間違ってはいない。確かに、個人向けの売り上げは増えている。しかし問題は、これまでの水準が想定に比べて余りにも低すぎたことである。
2024年末の報道にて、万博協会は公式サイトから購入された個人向けのチケットは12月18日までで約47万枚に留まっていることを認めた。
また、万博協会の副会長でもある関西経済連合会の松本正義会長は、前売り期間の1,400万枚という目標が達成困難であると語った。
これまでの報道機関の取材に対して、万博協会は上記のような楽観的な見方をしていたが、いよいよそれが転換された格好だ。最も、万博協会内部では危機感があったのか、10月より急遽、「万博ID」への登録が必要のない紙のチケットを、全国のコンビニで販売することになった。
交通アクセスの弱さを補うため、複雑な予約制度を導入したにもかかわらず、それに反するチケットの販売は、低調な売り上げに対する「テコ入れ」が目的であると言わざるを得ない。しかし、このチケットも2ヶ月間の売り上げは約5,000枚で、20億円超と言われる導入コストに対する損益分岐点である30万枚の、僅か3%程度に留まっている。
そもそも、このチケットの主な対象者は、万博IDの登録などのチケット購入に付随する様々なオンライン上の手続きができないシニア層である。そのような人々に、制度設計を捻じ曲げてチケットだけ買わせても、ほとんどの交通手段やパビリオンには万博IDの登録と予約が必要であり、さらに会場での会計が原則キャッシュレス限定であることは変わらないため、会場ではパビリオンや大屋根リングを眺めるだけ、という事態になることが懸念される。それに了承した人のみがこのチケットを使うことになればまだいいが、勘違いをした人が予約なく車で会場に行こうとする、あるいは会場に入ってからほとんどのパビリオンには予約が必要なことに気づいて落胆する、といった事態が起こることは避けられないだろう。
2025年に入って、開幕券と前期券が一週間あたり1.2万程度と、2024年末の4~5倍程度のペースで売れている。しかし、そのペースの増加は2ヶ月前予約の開始直後から鈍化しており、指数関数的な増大は観測されていない。
多少ペースアップしたとはいえ、前売り期間の残りは10週。目標達成には1週64万枚ペースで売る必要があるが、これは企業のまとめ買いが集中した9月中旬~10月初旬のペースとほぼ同じであり、それを3ヶ月間維持するのは容易ではない。
愛・地球博においても、約99万枚の未使用券が出た。会期中のチケットの多くは会場で買われているので、その多くは前売り券であろう。これは前売り売り上げ約938万枚の10.6%に当たる。今回の万博では、これを超える未使用券が出る可能性が高いと思われるが、企業がまとめ買いしたチケットがどこまで新規購入の妨げになるかが気になるところだ。
今後は、開幕券の2ヶ月前抽選が終わる2月26までの開幕券の売り上げに着目したい。これが伸びない場合、来場者の平準化は失敗に終わったといっていいだろう。


